暮らしと法律
交通事故の加害者が負う責任は、「民事」「行政」「刑事」の3種類があります。
★民事上の責任・・・事故によって損害を受けた人へ賠償を行う責任のことです。自賠責保険や任意保険に加入することで、損害賠償の費用を確保します。
損害賠償については、判例などから認められる項目や金額の基準がおおよその範囲で決められています。高額な賠償を請求された場合は、弁護士と相談して適切な賠償額を見極めましょう。
★行政上の責任・・・道路交通法によって運転者に違反点数が課せられ、運転免許の停止や取り消しなどの処分を受けることです。免許取り消しなどの処分は行政機関が行うもので、司法手続きを経て科される刑事上の責任とは異なります。
★刑事上の責任・・・人身事故を起こすことで、過失運転致死傷罪などの刑事罰が問われることです。
事故のケースによっては、罰金刑や懲役刑などを課されてしまう可能性があり、刑事処分が決まると前科がついてしまいます。保険に加入しているだけでは、刑事責任への対応はできないため、状況によっては弁護士に相談することをおすすめします。
【道路交通法の規定】
道路交通法では、速度違反をした場合、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられることになっています。
つまり、法律上は、どんなに軽微であっても、すべての速度違反が懲役や罰金の対象となっています。ですが、現在では、一般道では30キロ未満、高速道路等では40キロ未満の速度超過の場合、期限内に反則金を納付すれば、刑事罰には処せられない、つまり前科はつかないという扱いになっています。
これは、どうしてなのでしょうか。
【交通反則通告制度】
昭和40年代前半、日本の自動車が増えるのに伴って、交通違反の件数も急速に増加したため、すべての交通違反について刑事裁判を行った上で、刑罰を科すということが非常に難しい状況になってきました。
そこで、昭和43年に道路交通法が改正され、交通違反通告制度という制度ができました。比較的軽微な交通違反については、反則金を納めれば、刑事裁判にはかけられない、つまり前科もつかないという制度です。
軽微な交通違反については、青キップと呼ばれる交通反則告知書を受け取って、期限内に反則金を納付すれば手続はすべて終わることになります。ですが、期限内に反則金を納付せず放置してしまった場合は、刑事裁判を受けなければならなくなります。
また、交通違反をしたとされることに納得がいかない場合は、刑事裁判の中で交通違反について争うこともできます。
【重大な交通違反の場合】
重大な交通違反、速度違反の場合でいうと、一般道で30キロ以上、高速道路等で40キロ以上の速度超過の場合は、青キップではなく、赤キップを渡されることになります。
この場合、警察署や検察庁で取調べを受け、最終的には刑事裁判を受けなければなりません。
【おわりに】
交通違反をすると、反則金や罰金を納めなければならないことになりますし、重大な違反の場合は免許停止や免許取消など、生活に関わる処分も受けなければならなくなってしまいます。
交通法規を守り、安全運転を心がけ、事故のないように気をつけましょう。
近年問題となっている、「あおり運転」を処罰する法律が整備されました。
これまで、何を「あおり運転」というのかがはっきりしていなかったため、捜査や裁判の場で混乱が生じており「あおり運転」の意味を法律の上で明確にすることが必要であるといわれていたところです。
【道路交通法改正の内容】
今回の道路交通法改正で、処罰の対象となる「あおり運転」は、以下のものが規定されました。
交通を妨害させる目的で危険が生じると予測される行為として、
1.車間距離不保持
2.急ブレーキ
3.割り込み運転
4.幅寄せや蛇行運転
5.不必要なクラクション
6.危険な車線変更
7.パッシング
8.最低速度未満での走行
9.違法な駐停車
10.対向車線からの接近が規定されました。
また、高速道路上で著しい危険を生じさせた場合として、相手車両を停車させる、衝突事故を発生させるといった行為が規定されました。
交通を妨害させる目的で危険が生じると予測される行為をした場合の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、高速道路上で著しい危険を生じさせた場合の罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされています。
いずれについても、刑罰のほかに免許取消の処分を受けることとなり、その期間は2~3年間と長期間になります。
【自動車運転処罰法の改正】
道路交通法の改正とあわせて、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)も改正されました。
走行する車の前方で停止するなど著しく接近する運転、高速道路などで停車するなどの方法で走行中の車を停止または徐行させる行為が、危険運転行為に追加されました。
これらの行為によって、他人をけがさせた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上の懲役となります。
あおり運転を行わないように、時間にも心にもゆとりを持って運転するようにしましょう。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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