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わが町のアーティスト&クリエーター紹介

北空知在住の画家|渡辺貞之さん

深川市「アートホール東洲館」館長として


JR深川駅を出てすぐ左手にある「アートホール東洲館」。

そこで「わんちゃん先生」の愛称で親しまれているのが、館長の渡辺貞之さんです。

今回は美術館の奥にあるアトリエで渡辺さんにお話を伺いました。

高校時代からの夢は「絵描きになること」

 

北空知管内で教員として勤務していた渡辺さんのもとへ、美術館の館長になって欲しいと声がかかったのは退職を控えたある日のこと。

 

深川市で生まれ育った渡辺さんは、高校卒業後、働きながら美術大学への進学を夢見たものの、家庭の事情で叶わず旭川の大学へ進学。

いつかは絵描きになりたいと結婚後も妻からの応援を受け、教員をしながらヨーロッパなどを旅行し、「退職後こそは・・・」と考えていた矢先のことでした。

 

絵はリズムだから館長をしながら絵を描くなんて難しい、それに人に使われるのはもういやかなぁ・・・」その思いから何度か館長の話を断ったそう。

 

ですが構想の段階で、館内に館長室として使えるアトリエが用意されること、5年の期限つきであることなどから、「やってみるか」と、引き受けたのが今から18年前のことでした。

 

館長室兼アトリエ

3ヶ月での決断

 

深川市出身の書家「小川東洲」と、洋画家「松島正幸」の作品を展示する美術館としてオープンすると、連日市内外からたくさんの人が訪れ盛況をみせました。

 

しかし、3ヶ月もすると客足は止まり、2日に1人ほどしか来館者のいない日が続く。

 

「これはなんとかしなくては!」

 

自身のことを「カツオと同じで止まれない」と話す渡辺さんは、「考えたらやりたいんだよねぇ」そうニコニコしながら話してくれました。

 

「自分がいい作家だと思うものを紹介しよう!」

 

当初は深川市出身の2名の作品を展示するスペースとしていましたが、開館から3ヶ月で方向転換し、絵描き仲間の作品を持ち込んで展覧会を開催。

 

これが好評で客足が戻ると、次から次へと新しい企画を打ち出し、今では1年中様々な画家の展覧会を開催するまでに至ったのです。

 

また、展覧会だけにとどまらず、美術館のスペースをいかし、コンサートや、デッサン会など、思いつくことを次々と実現、3年前からは道内の作家を中心とした収蔵に力を入れているそう。

 

「道内には幻の絵描きと言われるような優秀な画家がたくさんいるが、その方が亡くなると、作品は処分されることが多い。せっかくの作品が遺族に理解されず捨てられてしまうなんて・・・なんとかしなくては」という思いから、遺族に連絡し絵を引き取りに行き、現在は700点以上を収蔵し逐次個展を開催しています。

 

様々な取り組みが功を奏し、ここ数年は年間1万人以上の来館者が続いており、「ニセゴッホ展覧会」には道内各地から作品が集まるなど、絵画好きから素人まで、幅広い層の心をしっかり掴んでいることがわかります。

アトリエの奥には作品を収める部屋がある

「待つ」ことの素晴らしさ

 

「アートホール東洲館」の館長の他に、脚本家としての顔を持つ渡辺さん。

 

始まりは「美術教諭の腕をいかして」と、声をかけられた人形劇団の舞台美術がきっかけでした。

 

昭和39年当時、子どもたちの娯楽のひとつ人形劇に携われたことは、教員としても嬉しかったそう。

 

舞台美術から、人形作り、ナレーションと幅広く取り組むと、腕前を見込んだ旭川のセミプロの劇団からも声がかかりました。

 

旭川の子どもたちを集めた演劇イベントでは、演出家が言った「子どもには元々センスがある、あとは待って引きだすだけだ」。

 

その「待つ」ということを演出の中で実践している演出家の素晴らしさに感動し、自分も演出・脚本に取り組むことを決めると、ちょうど市内の短期大学からオペレッタの脚本・演出として協力して欲しいと、舞台を作る機会に恵まれたのです。

 

短期大学で数々の作品を作ってきた数年後、当時の市長から「ユニークなまちづくりをしたい!市のホール専属の劇団を作れないか」と提案があり、「これは面白い!」と劇団を立ち上げ、多い時は50名以上いる団員と共に舞台を作る日々がはじまります。

 

後にホール専属の劇団から「深川市民劇団」へと形を変え、今では札幌公演も満席になるほどの人気を博しているそう。

 

また、60歳以上の劇団員で構成する「浪漫劇場」では、「必殺寝言人」や「座頭イチ・2・3」など、再演依頼が来るほどの人気の作品もたくさん生まれました。

 

こうした脚本の数々も全て渡辺さんが手掛け、延べ80作品を超えたそうです。

 

人形劇で登場した人形たち

5年の予定が・・・

 

当初5年の期限で引き受けた館長の任務も、気が付けば今年で18年を迎えました。

 

「絵描きになる夢は・・・」と、思われるかもしれませんが、館長をしながらアトリエで描き続け、札幌など道内各地で個展を開催しているそうです。

 

館長、脚本家・演出家、画家としての顔を持つ渡辺さんに、一番向いている職を尋ねると教師だったと振り返ります。

 

「僕は子どもに育てられた教師だから、あの時間のおかげで今があるんだ」

 

教員として子どもたちと向き合う日々は、本当にかけがえのない時間だったと話す渡辺さんは、現在北空知新聞に子どもと教育に関する記事を連載しています。

 

このように長年様々な場面で第一線に立ち続けることは、そう簡単ではありません。

 

でも、「芸術は心を豊かにし、生活も豊かにする」そう確信している渡辺さんにとって、地域で暮らす子どもたちや大人へ、芸術と触れるきっかけを提供することこそが、生きがいのひとつとなっているそうです。

 

この冬12年ぶりに一般市民公募の舞台を開催するんだと話す渡辺さんはとても嬉しそう。

 

「この舞台を通じて、子どもたちの新しい感性が引き出されるのが楽しみでね。舞台に立つ人はもちろん、観に来てくれる人にも届けたい・・・78歳まだまだ頑張りますよ!」

 

大きな笑い声がアトリエに響いていました。


「あの北の星から」

 

とき:2019年12月1日 開場13:30/開演14:00

ところ:文化交流ホールみ・らい(深川市)

チケット:大人1000円、学生500円

お問い合わせ:アートステージ空知 

電話 : 0164-22-3062(深川事務所)

子どもの本質を描いた作品。「暗い作風が多いんだよね」と笑顔を見せる渡辺さん。

【アートホール東洲館】

開館時間:午前10時から午後6時
休 館 日 :毎週月曜日(祝日の場合は翌日)

住所:深川市1条9番19号 深川市経済センター2階(※駐車場あり)
電話:0164-26-0026

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